途轍もなかった夏を引きずり、いつまでも酷暑が続いた九月だったが、
お彼岸の中日を境目に、
今度は唐突に11月直前級の気温まで下げる寒風が吹きすさび。
「おかげさまで、八百萬屋では、
フラッペ類より、
ホットケーキや鯛焼き、もんじゃの売れ行きが上がりました。」
フラッペやアイスって、
トッピングに凝って、
とんでもなく高く設定しているお店はどうか知りませんが、
ウチみたいな良心的な価格の店だと、
お客の回転が悪い割に儲けも薄いんですよねなんて。
特にしゃかりきになってもないくせに、
天候の変動がいかに経営に響くかと言いたげ口調になった平八であり。
「でもさ、ちょっと寒すぎの感もなくはない?」
「………。(頷、頷)」
ここの夏服はまだ袖が長いめで、肘近くまである半袖だけれど。
それでも今朝は何だか寒かったよおと、
二の腕を抱くようにして震えて見せていた七郎次へ、
すぐお隣でうんうんと頷いた久蔵だったが。
「そういや久蔵。」
「? 〜〜〜っ。///////」
そんな白百合さんが、唐突に身を寄せて来、
お膝へ無造作に投げ出していた久蔵の手を取ったものだから。
柔らかなその感触へ、不意なこととて どっきんと、
胸騒がせつつ、頬を赤らめておれば、
「あ、やっぱりだ。すっかりと冷たいじゃない。」
なんででしょうね、久蔵殿はいつもいつも指先が冷たくて。
案じるように、何故だか叱るように、
そんな口調になった七郎次の向こうから、
「末端冷え性ってのとも違うんですよね?」
ぱかりとケータイを開いて、メールを打ち始めた平八であり。
今日は部活のない日ですし、
帰りに寄ってってくださいな二人とも、と。
そんな言いようをしたところを見ると、
五郎兵衛へ、何か暖かいものをとのリクエストをしたらしく。
2つ折りのそれを閉じかけて、
その手が止まったひなげしさんだったのは、
「そっか、来週はもう10月なんだ。」
液晶画面へ現れたカレンダーに目がいったらしい。
待ち受け用にと最愛のゴロさんの写真を入れたその上へ、
ワンアクションで切り替えられるカレンダーを仕込んでいたのは、
誰かに覗かれたらそこはやっぱり恥ずかしいからというあたり。
一体どの辺が、アメリカ育ちの溌剌お元気ギャルなやら。(微笑)
それはともかく、
「そうだよ、もう衣替えだ。」
「いつもだったらまだ暑いのにって思うけど。」
「……。(頷、頷)」
今年は早く来てほしい心地もするような、と。
いきなり過ぎる涼しさには、ちょっぴり現金な彼女らでもあり。
立花屋さんは大忙しでしょうね。
? なんで?
だから、制服の新調の注文も多い頃合いでしょうし。
……俺も。
え? 久蔵殿、また背丈が伸びたの?
……。(頷、頷)
袖が短かったと言いたいか、
自分の腕を前へ伸ばすと、
するするするっともう片方の手で撫でて見せるのへ、
「まだまだ成長期ですもの。」
平八がうんうんと目を伏せての感慨深げに、
大仰なほどの同意をして見せて。
「わたしも実は春から、
ブラウスが少しキツかったんですよね。」
「胸が。」×2
すかさずのように切り返されて、
こらっと拳を振り上げ、真っ赤になったところが、
実は実は純情娘の平八で。
いやぁんヘイさんが叩く〜っと、
はしゃぎながら久蔵の背中へ隠れようとした、
白百合さんこと七郎次のお膝から、
ぱさりと落ちたは、コピー用紙を綴った楽譜集。
10月の半ばには体育祭があり、月末にはいよいよの学園祭。
久蔵殿は、
キーボードがピアノと勝手が違うことへ微妙につまづいていたけれど。
兵庫せんせえに何やらご教授いただいたらしく、
今じゃあ、次々に弾ける曲が増えてのめきめきと上達中。(現金な子だ。)
平八殿は、
担当のお歌には心配要らぬが、
その前の体育祭での徒競走が憂鬱だとかで。
そんなの一瞬で終わりますようと、
インフルエンザの予防接種のように七郎次が言うものの、
だってお二人は足が速いから、
人の気も知らずな言いようをなされるのですよと、
相変わらずに膨れておいで。
そしてそして七郎次はというと、
体育祭や学園祭も楽しみながら、
せっかくの晴れ舞台には、バンドの7人でお揃いの衣裳をと、
そっちのデザインをひねり出すのへと燃えておいでで。
「でもでも、突拍子も無い恰好はいやですからね。」
「…、…、…、…。(頷、頷、頷、頷)」
「やだなぁ、二人とも。///////」
何言ってますかってお顔をしつつ、
何を背後に隠しましたか?
え? 何のお話? …って、あ、久蔵殿っ。
〜〜〜〜〜〜。////////
一歩間違えたらボンテージなんてのは、
学園側が認めませんて、シチさん。
そぉっかなぁ、そこまで過激じゃあないよぉ。
イラストだから強調されて見えてるだけで、
ちょっと肩とお腹出すだけじゃない。
ゴロさんが嫌がるから却下です。
…、…、…、…。(頷、頷、頷、頷)
ううう、そんなぁ。
それでなくとも涼しい風が吹き抜けてゆくスズカケの木陰にて、
聞くともなく聞いていたカタバミの小さな葉っぱが、
はやばやと風邪ひかないでねと囁いた、お昼休みだったそうですよ?
〜Fine〜 10.09.25.
*う〜ん、女子高生だとぱぱっと書ける不思議さよ。
あ、でも今回は中身があんまり無かったし?(こらこら)
めーるふぉーむvv 


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